【起業ブログ】誰も教えてくれない社会の仕組み

会社員の憂鬱

会社員が独立起業するというのはここまで難しいものか。

これは、少々ややこしいが大切な話なので、順を追って説明する。なお、これは僕の失敗談・反省文であり、ちょっと現実的で生々しい話になるので、時間と心に余裕のある方は後段を読み進めてもらいたい。(※長いです)

会社員の身で独立起業するということは、まず、会社を辞める必要がある。そして、会社員が会社を辞めるということは、定期的な収入が途絶えると言うことを意味する。共働き世帯であれば、夫・妻いずれかが会社を辞めても収入が途絶えることはない。しかし、我が家の場合は少々事情が異なる。妻が仕事を辞め、海外移住をしているのだ。

元を辿れば、僕が言い出した海外移住であった。もちろん当初は僕自身が行くつもりで準備していたのだが、マレーシアのGuardian Visa (保護者帯同ビザ)の条件として父親の同行が許されておらず、母親のみ滞在が許されるVISAであることが途中で判明した。相談の上、妻が仕事を辞め、子供2人を連れてマレーシアに移住することになった。

ここでダブルインカムがシングルインカムになる。そして、僕が会社を辞めれば、ゼロインカムになる。収入が途絶えるのである。

いやいや、起業するんだから会社を辞めても新しい法人の方の収入があるんだから途絶えないでしょ、って思われるかもしれない。なんなら僕もちょっとそう思っていた。会社を辞めてできた時間を使って頑張って稼げばいいじゃんって。でも、現実はそれほど単純な話ではないようだ。

そして、僕の置かれている実態を正確に理解してもらうためには、まず海外移住の実態を理解してもらう必要がある。

会社員が海外移住できない理由

海外移住をすること自体は、特別難しいわけではない。

当然、言葉や文化、環境等の変化に適応することは求められるが、マレーシアであれば生活費は日本の半分程度に抑えることができるし、適切なアドバイザーさえ見つければあとは手続きを粛々と進めれば実現はできる。では、海外移住における壁は何かというと、2つある。ひとつは働く場所、もうひとつは費用だ。この2つが海外移住を実現するための必要条件となる。

場所の壁とは

実は日本の企業ではそもそも中長期、海外で働くことを制限している企業がほとんどである。その理由は、法務、税務、労務、情報管理などの点から、企業と従業員双方にとってリスクが高まるからだと言われている。したがって、会社員が会社員のまま海外移住しようと思ったら、出張や駐在のような短期滞在を除けば、勤める企業によってはマレーシア支社へ転籍するか、マレーシア支社がなければマレーシア現地企業に転職するほかない。これがまず会社員が海外移住するために越えなければならない場所の壁である。ただ乗り越えるだけで良いというのであれば、この壁は転籍 or 転職すれば乗り越えられる。しかし、その選択肢を選ぶと今度は別の壁が立ちはだかることになる。それがもうひとつの壁、費用の壁だ。

費用の壁とは

前述の通り、マレーシアの場合、生活費は日本に比べて半分程度になる。我が家のように、日本とマレーシアの二重生活になったとしても、全員が日本に生活していた時に比べるとおそらく支出は7-8割程度で抑えられるだろう。他方、収入についてはどうかというと、マレーシアの給与水準は物価同様日本の半分くらいで、大体月給でRM10,000 (35万円/月)超えれば頑張っている方だと言われている。

そして、費用の壁最大の主柱はインターナショナルスクールの学費である。マレーシアには120校以上のインターナショナルスクールがあると言われており、その学費の幅は年間一人当たり80万円〜350万円と幅広い。ちなみに、なぜこの金額差が生まれるかといえば、学校ごとによって施設の充実度、立地、先生のネイティブ比率、これまでの実績・ブランドなどが組み合わさって、需給のバランスで価格が決まっているようだ。したがって、それなりの条件を備えた学校を選ぼうとすると、150〜200万円/年くらいの学費の相場感になる。これでは、マレーシア現地の給与水準ではとても生活を維持できない。

以上のように、海外移住に伴う支出はざっくりとマレーシアの生活費日本の生活費子供達の学費に分類でき、海外移住を実現する費用の壁を越えるには、この支出を賄う資産を予め形成しておくか、支出に負けない収入を得ることが必要になる。

我が家の場合だと、元々の想定は、海外移住の期間は3年間、子供は3人、日馬(馬=マレーシア)の二重生活ではなく家族全員での移住を前提としていた。その実現に向けてこの10年間、労働、貯蓄、保険、株式、不動産等を駆使して資産を形成し、会社を辞めても期間限定であればなんとか支出を賄えるだろうという目処がついた。移住期間が終わった3年後は、もちろん懐はスッカラカンになるのだが、お金はまた頑張ってまた稼げばよい、今しかないのだ、ということで、えいっと海外移住を決断した。

費用の壁には奥行きがある

しかし、話はここで終わらない。どうやら海外移住というものは、期待していた以上に刺激に満ちているらしい。

マレーシアという国はマレー系と中国系、インド系がMixされている国であり、街中を歩いていても多様な国籍が混ざり合っている様子が見て取れる。妻と子供が通う英会話スクールでも、たくさんの国からご家族が集まっているようで、移住直後、中国と韓国のご家族とご一緒したようなのだが、そのご家庭の教育に対する真剣さが桁違いらしい。

中国や韓国の学歴社会やその競争の激しさ、ママ友の教育に関する知識量、勉強に対する真剣さは、日本のそれとは一線を画すレベルらしく、その熱量に触れた妻はすっかり感化されたようで、ある日LINEで話をしていると、「日本に帰る理由がなくなった」と言うのである。フットボール後藤に言わせれば、「ワシわい!」と即座にツッコむところだが、冷静に考えれば当初の計画であった3年後といえば、9歳の長男が中学に進学するタイミングであり、確かにそのままマレーシアで進学する道も考えなければならなかったことに気づく。無意識のうちに、費用面を理由に限界を作っていたみたいだ。そして、どうやら費用の壁にはさらに奥行きがあるようだ。

ただ、これは簡単な話ではない。中学・高校を海外で過ごすということはもはやその先に日本教育に戻ってくるという選択肢はない。そして、海外の有名大学は一般的にインターナショナルスクールよりもさらに高額な学費が要求される。

さて、じゃあ一体いくらかかるのか。こういうときは細かく計算しても仕方ないので、ざっくり我が家の状況を踏まえて概算する。子供3人、1人は国内私立中高大院と進学し、2人は海外インターで中高大院と進学する前提を置く。奨学金はなし。今の僕の会社員としての給料が継続し、かつマレーシアと日本の二重生活が継続するものと仮定し、ザクっと試算した。

試算した結果はどうかと言うと、末っ子が大学院を卒業し社会に旅立つ18年後、我が家の家計は、えっと、、2億円不足するという結果となった・・・。

まず前提を見直すか。ふんふん、それほどおかしくなさそうだ。次に家賃や生活費等のパラメータをひとつひとつ指差し確認してみる。うん、あってる、あってるよ。セルに入っている関数が間違ってないか、ひとつひとつ丁寧に見返す。これも大丈夫、いいじゃん。決して難しい計算ではない。月々の収支を18年間積み上げるだけだ。目をこすり、頭を冷水で冷やし、心をサウナで落ち着ける。そして試算結果を見直す。しかし、しかし、それでもやっぱりマジで2億円足りない。omg…

あー、これはやっちまったかなぁ。

そう思った。今になれば、完全に思考停止してたんだろうと思う。いわゆる昭和モデルのまま、良い大学を出て、良い企業に就職して、社会人になって、体と精神をすり減らして出世をすれば、右肩上がりに年収が上がり、自由な生活を手に入れられる。そしてその先に、海外移住もきっと実現できるのだと、多分、なぜか思いこんでた。けど、違った。その道では辿り着かないのだと現実を突きつけられたと思った。なぜそんなこと、今まで気づかなかった、、オレ。。。ああ、やっちまったかも。

この時、僕の中で何かがガシャンっと切り替わった感じがした。

この瞬間、僕は会社員であろうとすることを諦めようと思ったのである。人生で初めて実現したいことが明確になり、それが収入を遥かに超えたのである。進むべき道がこっちではなかったことに気づき、直ちに方向修正をしなければならないと思った。今さら間に合うかどうかわからない。成功するか失敗するかもわからない。まさに未知の世界。でも、今動かなければ、実現したい未来が訪れる可能性は文字通りゼロである事は肌で感じる。であれば、もう迷う余地はない。

これが、誰も教えてくれない会社員が海外移住できない理由である。

会社員の身で海外移住しようにも、日本法人では勤務できないし、会社員を続ける以上、結局金が全然足りないのである。

会社員が独立起業できない理由

会社員の生活に慣れきっていた僕は、これまで起業するなんて現実問題として考えたことがなかった。なので、会社員で無理なら起業しかない!とは言ってみたものの、起業して本当に実現できるのか実はよくわかっていない。選択肢がそれしか残っていないから消去法的に選んでいるだけかもしれない。それでもアクションするしかないので、とにかく法人を設立しビジネスを始めようと動き出した。そして、実際に動き出すと、いろいろと現実が見えてきた。

まず、法人を設立すると、定款というものを作る。そこで資本金や代表者を決めることになる。つまり、自分がその法人に出資をして代表取締役になるのだ。そして、代表取締役の報酬は、毎月支給される「役員報酬」と年一回の「役員賞与」を受け取ることになっている。そして、その金額やタイミングを法人設立から3ヶ月以内に決めなければならないというルールがある。しかし、当然ながら起業当初は売上がゼロなので、「役員報酬」なんて払う余裕はない。ただ、「役員報酬」がゼロだと今度はキャッシュフローが見えなくなるため、1万円だけ支給することにした。一方、「役員賞与」は一度決めたとしても、業績次第ではやっぱり貰わないという選択もできるらしいので、こちらもいくらか設定し一月に支給することにした。これが、法人の代表取締役に対する報酬の仕組みであり、今置かれている状況である。

・・・お気づきだろうか。

まだ会社を退職する時期が決まっていないのに、新法人の報酬が固定されているのである。これが何を意味するのかというと、僕ものちに気づくことになるのだが、会社を退職する時期が、自分の意思とは関係なく、自動的に決まっているということである。どういうことか。

たとえば、わかりやすく会社員としての給与が仮に月収50万円,、新法人の役員報酬1万円/月役員賞与100万円としよう。そして、2025年6月末に退職するとする。すると、2025/4~2026/3における年収は、50万円 × 3ヶ月 + 役員報酬1万円×12ヶ月 + 役員賞与100万円 = 262万円となる。では今度は、2025年12月末に退職するとする。すると、2025/4~2026/3における年収は、50万円 × 9ヶ月 + 役員報酬1万円×12ヶ月 + 役員賞与100万円 = 562万円となる。

お分かりだろうか。計算式の後半、新法人の収入が会社の退職時期に関わらず定額なのである。つまり、会社を辞め、空いた時間で新法人でのビジネスを頑張って、たとえ1億円の売上があげられたとしても、その業績を役員報酬に反映できるのは年に一回だけ、つまり2026/4以降となるのだ。年間の支出はおおよそ決まっている。仮に年間の支出が500万円だとすると、6月末に退職してしまうと途中で資金がショートすることになる。ゆえに、せめて11月、12月までは会社員を続けなければならないことがわかる。

ここをちゃんと理解してなかった。果たしてこのタイムラグを許容できるのか。

さらに、会社退職後にのしかかってくる住民税や所得税、株売却にかかる税金、社会保険の支払いなどなどが2026/3までに発生することも忘れてはいけない。これも決して軽くない。

その条件下で、新法人の売上を上げなければならない。ここで、時間の壁が立ちはだかる。

新法人のビジネスはBtoBのコンサルティング事業である。いわゆる労働集約型のビジネスであり、僕が動かなければ売上は一ミリも増えない。しかし、会社員である平日の日中は普通に会社の仕事がある。新法人の仕事はそれ以外の時間でやらねばならない。僕自身はそれでも別に構わないのだが、クライアントとなる企業の多くは平日の9-18時以外の時間帯は営業時間外だ。いつ、誰に、どうやって営業かけるの??となる。しかも、前述の退職タイミングの問題が重なり、一刻も早く退職をして、平日日中の時間を作り営業をかける、という手も打てない。

ふむ、、これ・・・もしかして、、詰んでる??笑

これが冒頭の「会社員が独立起業するというのはここまで難しいものか」というボヤきにつながる。

前に進むということは、今の安定を崩すということ

長くなってきたが、もうすぐ終わる。少しまとめるとこうだ。

海外移住により支出が短期的に膨れ上がり、会社員の給料では全然足りないことに気づき起業を志す。しかし起業はできても、初年度の収支のやりくりには細心の注意が必要。初年度の収入は、立ち上げたばかりの新法人の報酬は期待できない(固定されている)ため、会社の退職時期によってほぼ決まる。さらに、退職後にかかる各種税金+社会保険料を踏まえて、手持ちの現預金+会社員の給与で過ごせる残期間によって退職時期が自動的に決まる。そして同時に、日々の生活費を考えると、新法人の売上見込みが立つまでは会社を退職する事もできない。つまり、並行して平日日中は会社員として9-18時で仕事をしながら、それ以外の時間で案件を創出して売上見込みを立てなければならない、というゲームだったということ。

これは、きっと一本道だろう。会社員が海外移住と起業を目指す場合、おそらく誰もが同じ道を通るのだと思う。ただ、この道を通ったことのある人がまだあまりいない気がするので、ここで長々と記事にさせてもらった。

これらの事実は、誰かが教えてくれる類の知識では無い。自分で動いてやってみて気づくことだ。そして、これからもこんなことばかりなのだろう。ここで改めて思うのは、新しいことに挑戦すればするほど、できない理由がその挑戦を阻むかのように現れてくる。これはもはやセットと考えたほうがいい。新しいことに挑戦する、勇気を出して一歩踏み出すことそのものが、これまでの安定・安全・安心との訣別を意味する。安定・安全・安心を抱えたまま、一歩踏み出す事はできない。

私には守るべき家族がいる、築き上げた地位がある、今の職場には助け合える仲間がいる、家を買ったばかりで、、これらは全て、新たな挑戦をしない理由になり得る。

しかし、本当に挑戦しない理由になっているだろうか?

挑戦することは、大切なものを捨て去ることではない。これまで大切にしてきたことと、これからやりたいこと・大切にしたいことを両立させるために、一歩踏み出して挑戦するのである。この挑戦の中にこそ、この乗り越え方にこそ、自分らしさが滲み出るのではないだろうか。

後悔をしない人生を生き切るためには、一日一日を全力で過ごす必要がある、とは以前も書いた。挑戦する道としない道、どちらが自分の全力を出せるのか。できるかできないかじゃない、どちらが自分の人生に後悔を残さない道か。それで決める。

全力を出さない理由を必死に探す姿は、結局、ビビってる自分を隠そうとしている姿に過ぎない。

と、最後に自分を追い込んでおく。

【ご参考】タグクラウド

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